Douglas DC8-32 FUJI

日本航空が1960年8月サンフランシスコ線就航させた日本最初のジェット旅客機、DC8-32「富士号」。初就航時に導入された4機のDC-8-32には、それぞれ日本の代表的観光地名が愛称として与えられた。JA8001「富士」 JA8002「日光」 JA8003「箱根」 JA8005「宮島」。このうちJA8003「箱根」は61年4月羽田で中破、-53に改修されてJA8008「松島」となるが、逸話としてこの機体は通称「元箱根」と呼ばれたそうである。

DC-8の主翼後退角は707の35°に対して30°と浅く、翼構造の剛性を高めることが可能で、翼捩れによるエルロンリバーサルの恐れが少ないため、通常の翼端エルロンだけでの横操縦を可能にし、操縦系統の簡略化と、レシプロ機からの移行時に操縦感覚の違和感の差を無くす事、後退翼独特のダッチロール傾向を弱める事もできたが、実際にはヨーダンパーの性能も低いこともあり、飛行中は常に機首が僅かに8の字を描くような運動をしていた。翼型は、翼幅方向で変化させて揚力分布の均衡をはかったが、実際に飛行してみると付け根付近での逆カンバーが効きすぎ抵抗が大きく燃料消費が増えてしまい、苦肉の策で巡航中はフラップを1.5度下げてこれを補ったが-50シリーズからは翼形などを変えて根本的な改良がされた。

エンジンはターボジェットのJT4Aだが、騒音が高く、消音効果の有る花弁型の排気口を採用したがまだ高周波騒音が大きいため、消音装置と逆推力装置を一緒したエジェクターを装備した。エジェクターはケーブルを介した油圧で展開されると、高周波の音源である花弁型の排気口を覆うとともに、冷たい空気との混合を促進して推力を増す効果を生むが、100ノット強までは推力も増す利点があったものの、高速では空気抵抗と相殺されるため引き込み式となった。エジェクターに装備したスラストブレーキは最大連続推力状態(圧力比2.5)で44%の逆推力を得る。型式はターゲット(パケット)型で、飛行中でも使用可能でスラストブレーキと称した。

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